FC2ブログ

2018-10

カトマンズのおはなし 8 事実は小説より奇なりと言いますが・・・その1 - 2013.05.01 Wed

他愛も無い会話をしながら、ぼくら4人は注文した久しぶりの日本食が来るのをたのしみに待っていた。この後の惨劇など知るはずも無く・・・

カトマンズにあの3人が帰ってきた。約3週間のヒマラヤトレッキングから帰ってきたナベさんチカさんライくんの3人だ。日焼けした彼らは少したくましくなったように見える。久しぶりの再会を祝してぼくら4人は晩飯を一緒に食べに出かけた。

どこで食べようかと悩んでいる時に、ナベさんの「やっぱ、カチュドンっしょ。」の一言で全会一致。

カツ丼のことを「カチュドン」と発音する少しだけ日本語を話せる店員さんのいる日本食屋がある。控えめでまじめそうな店員さんの甲高い片言の日本語に、ぼくは何か暖かみを感じていた。

そこはカトマンズに来て最初に4人で入った日本食屋で、カツ丼を食べた思い出のある店だ。あれから他の日本食屋で何度かカツ丼を食べたが、あの店のカツ丼が一番だった。
店名も、もちろん店員さんの名前もカチュドンではないが、ぼくらにとって「カチュドン」といえばあの店員さんのいるあの日本食屋なのだ。

席につき、ナベさんとぼくはカツ丼、チカさんはなすチリ定食、ライくんが親子丼を注文した。店員さんは相変わらずカチュドンと発音していた。

カチュドンのカツ丼は卵が半熟で火を通し過ぎていないところがいい。なすチリ定食も親子丼もおいしいと言っていた。久しぶりのカチュドンの日本食に満足し、4人とも残さずきれいに完食。そろそろ出ようかという時に、ライくんがちょっと待って動けないと言う。何言ってるんだろう?おなかいっぱいになり過ぎたのかな?と思い、特に気に留めることもなく、大きいお金をくずしたかったぼくは先にレジへ向かった。そしてレジでお金をくずしてもらっている時にナベさんの声が聞こえたんだ。

「ヨッキー、ライくんちょっと変!」

どうしたのかな?と思い席に戻ると、ライくんが「うぅ~~~」と小さくうめき声をあげていた。そしてそのまま倒れてしまった。軽く痙攣もしている。3人で「ライくん!ライくん!」と呼びかけ直に目を覚ました。

「うぁ~戻って来れたぁ~、良かったぁ~」とライくんはわけの分からないことを言っている。どこ行っちゃってたんだ?と気になるが、それは置いといて先ずは介抱だ。顔色がだいぶ悪い。気持ちが悪いらしく吐きたいようだった。トイレまでは動けないということだったからバケツをもらってこようとしたけど間に合わず、ライくんは今食べたばかりの親子丼をその場に尋常じゃない勢いで全てぶちまけた。まるでマーライオン。辺りはたちまちフレッシュな親子丼の匂いに包まれた。

小学校の時の遠足なんかでは必ずと言っていいほど車酔いをしてバスの中で吐いてしまう子が1人はいた。そうすると、その近くにいる子もつられてもらいゲロをしてしまう。遠足のお裾分けですね。その遠足のお裾分けをナベさんもライくんからもらいそうになっていた為、一旦外へ出ると行ってこの場を離れた。

もう、こうなったら全てを吐いて楽になれとぼくとチカさんでライくんを介抱していた。そんな様子をカチュドンは「ワー!タイヘン、タイヘン!」と片言の甲高い日本語で繰り返していた。全てを出し切ったライくんは落ち着きを取り戻し、ぼくたちの声に「大丈夫」と言えるようになっていた。まぁ見た目はぜんぜん大丈夫じゃないんだけどね。ライくんが一段落したと思ったら、今度はレジの方からカチュドンの甲高い声が聞こえてきた。

「ワー!コッチモタイヘンデ〜ス!」とこの緊迫した状況には不釣り合いなトーンでカチュドンが甲高い声でわめいている。心に余裕の無いテンパっている状態ではカチュドンの甲高い片言の日本語に暖かみの「あ」の字も感じることは出来ず、ただイラッとするだけで「うるせぇーな」としか思えない。そう思いつつも声の方へ行ってみると、なんとそこにはナベさんが倒れていた。

絶句。まさに絶句とはこのことだ。「遠足のお裾分けもらい過ぎですよ。」なんて冗談を言えるような光景ではなかった。一体どうしちゃったんだよ。何が何だか・・・

とにかく「ナベさん!ナベさん!」と体を叩きながら呼ぶが反応がない。先ほどのライくん同様「うぅ〜〜〜」と小さくうめき声をあげている。でも、痙攣はしていない。気絶したままうつ伏せ状態で吐いてしまっているから顔がゲロに埋まってしまっている。

このままでは窒息してしまうと思うが下手に動かすのもいけないような気がする。仰向けにしたとして、その状態で吐いたらゲロが詰まってしまって窒息してしまう。うつ伏せでも仰向けでも窒息しちゃうなら横だな。横向き決定。力の入っていないグニャグニャ状態の人間の重みは増す。うまく横向きになかなか出来ず、ナベさんの顔はさらにゲロまみれになってしまった。左の眉毛の端辺りからは血が流れていた。倒れた時に切ってしまったんだろう。

「ナベちゃん!!!」背後から聞こえた。チカさんだ。ナベさんとチカさんは夫婦だ。チカさんも心配そうに「ナベちゃん!ナベちゃん!」と呼びかける。あっ!ぜんぜん大丈夫ではないであろうライくんが一人になっちゃってる。ということで、ナベさんをチカさんに任せ、ぼくはライくんの元へ戻った。程無くしてナベさんも意識を取り戻したようだ。ナベさんも呼びかけに「大丈夫」と言えるようにはなったが、ライくん同様ぜんぜん大丈夫には見えない。

一体これはどういうことなんだ?なんで次々と同じ症状で人が倒れるんだ?わけが分からない。

カツ丼と親子丼の合わせ技が織りなすフレッシュなニオイに包まれる中、じわじわと迫り来る恐怖心をぼくは感じ始めていた。

次はぼくの番なのか?と・・・


つづく。

                         2009年  旅日記  カトマンズより

     
      
IMG_9647.jpg 
                            ©Seiji Yokoshima

   

ホームページ 

http://www.snapla.jimdo.com/

 人気ブログランキングへ

関連記事
スポンサーサイト

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://fxst99.blog25.fc2.com/tb.php/221-723cdd79
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

カトマンズのおはなし 9 事実は小説より奇なりと言いますが・・・その2 «  | BLOG TOP |  » カトマンズのおはなし 7 レジ前

プロフィール

せーじ

Author:せーじ
自分のまわりで起こったこと、
思ったことなどを書いています。


写真集
BLINK MEMORIES - La Habana

 DPP_0001.jpg

価格 ¥1,944 (税込み)
アマゾンから購入できます。
⬇⬇⬇
Amazon 


ホームページ
http://www.snapla.jimdo.com/


旅跡
2018
 カサブランカ・モロッコ

2017
 プノンペン・カンボジア

2016
 メキシコシティ・メキシコ

2015
 イスタンブル・トルコ

2014
 ハノイ・ベトナム

2013
 プラハ・チェコ

2012
 上海・中国

2011
 ハバナ・キューバ

2010(年末)~11(年始)
年末年始を宗谷岬でキャンプ。
宗谷岬まで真冬の北海道を
スーパーカブで走る。
北海道

2009~10
約9ヶ月、バックパックを背負ってアジアをまわる。
中国、ネパール、インド

2003~04
ハーレーダビッドソンで南北アメリカ大陸縦断、約6万kmを走る。
カナダ、アメリカ、メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、 ニカラグア、コスタリカ、 パナマ、コロンビア、エクアドル、 ペルー、ボリビア、アルゼンチン、チリ

カテゴリ

上海のおはなし (7)
ハバナのおはなし (16)
デリーのおはなし (16)
カトマンズのおはなし (22)
中国のおはなし (34)
旅のおはなし (169)
この頃のおはなし (30)
未分類 (0)

FC2カウンター

ランキング

FC2Blog Ranking

人気ブログランキングへ

月別アーカイブ

最新トラックバック

リンク

このブログをリンクに追加する

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

RSSリンクの表示

QRコード

QRコード