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カトマンズのおはなし 10 事実は小説より奇なりと言いますが・・・その3 - 2013.05.13 Mon

「ヨッキーは大丈夫?」

チカさんのこの言葉が、ぼくの中でこの後とても大きな存在になろうとは思ってもみなかった・・・


緊急搬送された人が一時的に入る病室なのか何なのか、6〜7台のベットが並んでいる。無菌室でなければいけないとは思はないが、それなりにきれいでなければいけない気もする。だが、そこはとてもオープンな感じで、その部屋と埃っぽい外の世界は扉無して繋がっている。

そんな病室にはナベさんとライくんの他にも患者がいる。その内の一人のおばあちゃんはだいぶ具合が悪そうで、咳き込んだり嘔吐いたりしていた。何かの伝染病じゃないことを祈りつつ、早く2人を診てくれよと思っていた。

2人とも相変わらず顔色が悪く、とても寒そうにしている。足の指なんてまったく血色がない。このままではとてもまずい気がするんですけど・・・と思うが、最初にちょっと診ただけで、その後医者たちは2人に見向きもしない。死にそうな人間を目の当たりにして知らんふりはさすがにしないだろう。もしかしたらそんなに悪くはないのかな?なんて思いながら2人を見守ることしか出来ない。そんな時にチカさんがぼくに
声をかけてきた。

「ヨッキーは大丈夫?」

チカさんは半熟卵を疑っていた。ぼくも2人と同系統のものを食べているから、チカさんはぼくに大丈夫?と言ってきたのだ。ぼく自身さっき食べたものを疑っていたし、チカさんも食べたものを疑っていることが分かった。ちゃんとした根拠は何もないが、チカさんの半熟卵説がぼくの中で濃厚となってきた。そう思えば思うほど、何だか少し気持ちが悪くなってきたような気がしてしまうのが、小心者の悲しいところだ。

ぼくとチカさんは
医者に呼ばた。悲しい気持ちになっているところだったから悲しいお知らせなのかと思い少し緊張する。医者は、ぼくらにノートの切れ端を渡した。そこにはメモが書いてある。医者は外を指差し何やら言っている。指の示す先には薬局らしき建物がある。人手が足りなくて薬を取って来いということなのかと思い急いでメモを片手に薬局へ行った。

メモを見た薬剤師らしき人が点滴やら注射やらいろいろ出してきた。
消毒もしていないこの手で袋に入っているとはいえ点滴の材料やら注射器やらを触ってもいいのだろうか?という疑問もあるがしょうがない。これでやっと2人の治療が始まる。急いで戻ろうとするぼくに薬剤師は金を請求してきた。

どういう仕組みなのかハッキリとは分からないが、どうやら治療に必要な薬を買ってきてから治療が始まるらしい。何なんだよと思いつつお金を払い医者に薬を持って行く。いろいろあったがようやく治療が始まることにホッとした。2人にとっては尚更のことだろう。

ナベさんは倒れた時に切った目の上の傷を縫い、その後2人仲良く尿を取ったり採血したり。採血の時に失敗の連続で5回ぐらい針を刺されていたライくんは具合が最悪なのにも関わらずしっかりキレていた。それを見たぼくはかなり安心した。これなら大丈夫そうだなと。

同じ点滴を打っているはずなのにナベさんとライくんのでは点滴の落ちるスピードがぜんぜん違ったり、
医者が薬を間違えたのか忘れたのか何度か薬を買いに行かされ、その度に「何なんだよ。」と軽くイラついたりと細かいことはいろいろあったが、点滴を打たれながらベットで寝ている2人を見て「大丈夫だな」と思えるようになったことが何よりも大きかった。2人の大丈夫はぼくの大丈夫でもあるからだ。このまま2人は一晩だけ入院するということだ。1人付き添いがいないといけないらしいから、チカさんも一緒に病院に泊まるということになった。

もう夜中になっていた。野犬の遠吠えが響く人気の無い暗い街中を急ぎ足で帰った。いろいろあり過ぎた長い夜だった。
寝袋に包まり目を閉じる。安アパートの薄ら寒い部屋はとても静かだった。時折、犬の遠吠えが聞こえる。まだ少し興奮状態なのかなかなか寝付けない。さっきまでの出来事が頭の中でダイジェスト版として再現される。

「ヨッキーは大丈夫?」このチカさんの台詞でダイジェスト版はストップする。本当に大丈夫なのだろうか?さっきまで、もう大丈夫だろうと思っていたのに、この台詞で再び疑問を感じはじめてしまった。時間差マーライオンになる可能性はあるんではないか?もし今、さっきの2人みたいになってしまったらかなりヤバいだろう。今、ぼくは独りだ。

嫌な思考は本当に嫌なやつだ。この間の自分が最悪に具合が悪かった時のことまで持ち出してきた。さっきのナベさんライくんの惨劇。少し前の自分の惨劇。

「ドクンッ、ドクンッ」と自分の心臓の鼓動が大きく聞こえだしてきた。

眠るのが怖い。BGMは野
犬の遠吠えだ。

まったくなんて夜なんだ。


                     2009年  旅日記  カトマンズより


  
IMG_1953.jpg 
                                         © Seiji Yokoshima



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